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 しっぽしっぽ

はじめまして。
ぼくのなまえは 「しっぽ」です。
このおうちでは そう呼ばれています。

きょねんの冬 風邪を引いて さむかったときに
だれもいない いぬごやで 休んでいました。

そうしたら、人間のおにいさんとおかあさんが
お薬とごはんををくれました。
はじめはからだにさわられるのがこわかったけど
いまではおうちのひとになでなでされるのがだいすきです。
さいきんやってきたおねえさんは
ブラシでぼくのからだの毛をきれいにしてくれます。
むかし あのいぬごやにすんでいた犬に
ぼくがにているそうです。

おうちには バニラさんという おねえさん猫がいます。
いっしょに遊びたいけれど ちょっとぼくをけいかいしているようです。
でも バニラさんは ぼくをたたいたり かみついたりしないよ。
早くなかよくなれると いいなあ。

「うちの 内猫はバニラさん。外猫は しっぽ。」
おうちのひとはそう言います。

だから、ぼくは このおうちの 「そとねこ」 に なりました。








… と言うような この子の紹介が出来る前に、
しっぽはいなくなりました。



最近、交通量が増えてきた自宅の前の道路での交通事故でした。


4月19日、朝の9時頃。
家の中を片付けているときに玄関のチャイムが鳴りました。
そこには、幼稚園ぐらいの兄妹を連れた見知らぬ女性が立っていました。

「お宅の猫ちゃんだと思うんです」
そう言われて行ってみると、
すでに冷たくなっているしっぽが横たわっていました。

お母さんと二人の小さな兄妹は心配そうにこちらを伺っていました。
「ありがとうございます。はい。確かにうちの子です。」
「ああ… やっぱり。 いつも縁側にいた子だから
 もしかしてと思って。」
「ええ。…本当に、知らせてくださってありがとうございます。」
お礼を言って、しっぽを抱き上げました。
もう血は乾いていましたが、
頭を打ってかなり出血しています。
ひどい傷ではありませんでした。
けれど、小さい子にはあまり見せたくない状況です。

「お兄ちゃんたちもありがとう。けど…」
見せない方がいい、と、言おうとしたとき、
お母さんが 「じゃあ、これ使ってください」
と、ハンドタオルを渡してくれました。

そのとき、やっと気がつきました。

お母さんがベビーカーを曳いていることに。
そしてそのベビーカーの上に、
ピンクのペット用キャリーケースが乗っていることに。

その中にはちいさな白い子猫がいました。

ああ、このお母さんは、単なる親切心からではなく、
ほんとうにしっぽのことを心配してくれたんだ。
とても、とてもありがたい気持ちになりました。

そしてしぜんに言葉がこぼれました。

「ほんとうにありがとうございます」

ハンドタオルでしっぽの顔をそっと包み、
お礼の連絡先を伺いましたが、
「大丈夫ですよ。」 と にっこりとされるだけでした。

「それよりも早くおうちに連れて帰ってあげて下さい。」
促されて、帰ることにしました。

リビングの窓辺に段ボールの棺を据え付け、
しっぽを休ませていると、
生け垣の向こうにあの母子たちの後ろ姿が見えました。

母子たちはこちらに気づいてはいませんでしたが、
もう一度、お辞儀をしました。


棺の底に、しっぽが身体を休めていた犬小屋の中敷きを敷き、
父と母が育てているガーデニングの鉢から
白い野菊と青紫色の小花を中に入れてあげました。


その日、しっぽは初めて、
家の中で眠りました。


2日後。21日の今日、荼毘に付しました。
あのお母さんがくれたハンドタオルも一緒です。
やさしい心をくれる人がいたことが
私たちの気持ちを少しく安らいだものにしてくれました。



しっぽを車に乗せようと駐車場へ向かうとき、
それまでしっぽを避けていたバニラが途中まで付いてきました。
よかったね、しっぽ。
バニラが見送ってくれたよ。

そしてバニラ、ありがとう。
しっぽがおまえを慕ってくれてほんとうによかったね。


しっぽは男の子なのにとても穏やかな子でした。
薬を飲ませるのも、一度は警戒しましたが、
体調が良くなったのが分かったのか、
二回目からはおとなしく飲ませることが出来ました。
慎重でしたが、分別の付く賢い子でした。

ほかの猫となかなかなじめない性格のバニラにも、
優しく接してくれました。
みんなが、新しい家族になってくれると思っていました。
しっぽは無理に家の中へ入ろうとしませんでした。
膝の上に乗せようとしても、するりと降りる子でした。
「そこ」はバニラの場所だと分かっていたのでしょう。

しっぽが自分から家の中に入って来るのをずっと待っていました。
家の誰も、ずっと待っていました。
(バニラはちょっと違ったかも知れないけどね)


こんな形になってしまいましたが
しっぽは「うちの子」になりました。


家族になってくれてありがとう。しっぽ。

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無題
しっぽちゃん、かわいいですね。
寂しくなるすが安らかに。
アモウ 2006/04/22(Sat)07:05:50 編集
どうか安らかに…
悲しい結末ですが、彼に家族が出来た事、そして愛情をたくさん貰った事はこの上ない幸せだったと思います。
weep URL 2006/04/23(Sun)14:11:55 編集
ありがとうございます
アモウ さん>
weep さん>
お言葉ありがとうございます。
そう言っていただけると
しっぽも喜ぶと思います。
akira 2006/04/23(Sun)16:15:20 編集
無題
私は猫がすっごく好きだけど、アレルギー持ち+家族が動物好きじゃないという事で、ペット飼えない人なので、動物と一緒に暮らすってなんか憧れてます。
でも、こうやって死と向かい合ったりすることも必ずあるんだよね~。
動物と関わるって、奥が深いなあと思ったり・・。
かわいいしっぽちゃんが天国に行って、
天使になって、あっちこっちお散歩楽しんでるといいね。
みならい魔女 2006/04/25(Tue)00:46:48 編集
初七日あけです。
色んな励みが付いてちょっと浮上しました(オタクファクターもあったり…)。
心配やお言葉をかけてくださった皆様、
本当にありがとうございます。

みならい魔女 さん>
しっぽに優しい言葉をありがとうございます。

動物と一緒に暮らすと、色んな大事なモノが見えてきます。
幸せも、かわいさももらえますが、
「いのちある仲間」を大切にしたいと思う
「優しい気持ち」を私たちの中に育ててくれます。
だからこそ、彼らとの絆は最期まで大事にしたいと思います。


私のうちに現在いる
(そして過去にいた)犬猫は、
ほとんど迷子だったり、野良だったりしました。
(一頭だけ、母犬が産んだ子がいます)
何かの縁でうちに来てくれた子たちなのだ、
と、思います。
過度な贅沢はさせませんが、
「死」という彼らの最期まで、
そしてその後までも、
ずっとお付き合いしていくつもりです。

動物だけでなく、人間とでも、
植物とでも、そういう関係が築けたらいいですね。
akira 2006/04/25(Tue)22:53:31 編集
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